葉脈と潮流

純粋さを磨き、迷わない。

ウチのぬいぐるみは喋らない

ぬいぐるみって、基本的には喋るらしい。ぬいぐるみ持ちの人の家にいるぬいぐるみは喋ることが多いらしい。少なくとも僕の周りではそうみたい。ウチにもぬいぐるみが3体いる*1。でも、ウチのぬいぐるみは一切喋らない。そういえば、それって少し妙かもしれない。

僕の頭の中にはたくさんの人がいる。何か問題を前にした時、頭の中で色んな人がいろんな意見を言って、いろんな人の意見をまとめて、「僕」としての意見が生成される。なんなら頭の外にも人はいる。何かをしようとするとそれを嗜めたり非難する声(だいたい批判的だ)が響いてくる。ついでに、この場ならこの友人はこう動くだろうなという姿も勝手に再生される。僕の内外には色んな声がある。特に望んだわけではないけれど、常に騒がしい。

 

でも、ぬいぐるみは喋らない。喋らないし、僕も彼らに対してどう接するかあんまり分かっていない。今思うと、ぬいぐるみって知らない人かも。こんなに一緒にいるけれど、なんか遠めのクラスメイトみたいな距離感。あ、こんにちわ……今日は、なんか寒いですね、前線が過ぎていったからですかね…… 会話しようとしたけどこんなのしか思いつかないな。

だって、喋ってもらうためにはぬいぐるみたちと接する必要がある。そのためには、ぬいぐるみたちの欲求を聞いて、僕の欲求とすり合わせて、コミュニケーションをする必要がある。そして、そのためには喋ってもらい声を聞く必要がある。喋ってもらうためには…… 以下無限に条件が繰り返される。

 

僕は現実的問題を処理するロボットのようなものだ。空想することができない。過去のパターンから予想して、たまにパターンをツギハギして、少しだけ未知のものを作れるだけ。まるっきり突飛なことは考えられた試しがない。悲観はしてないよ。そうなんだなって思っているだけ。だからお迎えしたまっさらなぬいぐるみに、人格を与えられない。

それでも、ウチにぬいぐるみがいることは、自分の世界に自分でない何かを介入させたいという願いなんだろう。他の人のぬいぐるみが喋るというエピソードを聞くと、羨ましく思ったりするし。ウチの子もいつか喋るようになるといいですね。もしくは、願いに折り合いをつけて諦められるといいですね。今の状況は不安定で、そのどちらのルートも安定のルートだから。

*1:3匹というと動物的すぎるし、3人というほど人っぽくはない。人と動物の間。