葉脈と潮流

純粋さを磨き、迷わない。

ポーカーをするときに見える「ブラックボックス」についての推察

こんばんは。ネズだよ。この前の東京旅行で、東京のポーカー屋さんに行って、そこで少しポーカーをしてきて、あるハンドがずっと印象的で、ずっと考えてるの。「そのハンドをどうするべきだったか考えている」とかではなくて、自分がそのハンドをそうプレイした理由が分かっていない。自分のポーカーが、なにに依拠してできているのか、ぼくは知らない。

だから、いまこの記事を書いている。この記事がどこに着地するのか、自分でも分かっていない。これから書かれる文章は、自分の頭の中を一つずつ紐解いて、自分の形を把握していく行為。とはいえ、ぼくにとって自分の思考はブラックボックスだから、推察でしかないのだけど。推察でも、簡易モデルでも、少しだけ把握に近づいていく。そんな記事です。たぶん。

 

とりあえず、まずはどんなハンドだったかを書いてみる。ROOTS SHIBUYAというお店のデイリートーナメント中盤、ぼくは30000点スタートの22000点くらい持ち。ブラインドは確か400/800だったので、27BBくらい。相手になった年上のお兄さんは、たぶん25000点くらい持ってた。つまり、数千点カバーされてた。

お兄さんは渋谷らしく格好良い雰囲気で、ポーカーもこなれてた。格好良いから、たぶんポーカーもかなり上手い。テキトーなこと言ってるように聞こえるかもしれないけど、そうなの。ポーカー上手いタイプのイケかたしてたもの。他者からの視線を適切に把握できるタイプ。たぶんポーカーの経験はぼくよりずっとあるだろうし。

対してぼくのテーブルイメージは(ぼくなりに見れば)平凡なポーカープレイヤーという感じ。プリフロップレンジがやや堅めで、比較的アグレッシブで、ある程度勉強はしてそうな、とはいえ「平均」から逸することもなさそうな感じだと思う。格好良くもないしね。服も雰囲気も自己中心的だから。

 

前提が長いね。どんなハンドだったか見ていこう。

プリフロップ、UTGのぼくはA♣10♦が配られて、2.5BB、2000点にレイズ。COのお兄さんだけがコールし、ヘッズアップ。

フロップ、KKJ。クラブが一枚、ハートが二枚。ぼくはチェックし、COのお兄さんが2000点の安いベット。ぼくはそれを7500点にレイズし、お兄さんが少しだけ時間をおいてコール。

ターンは6♣。あんまり詳しく覚えてないけど、低めのカードのクラブだった。お互いチェックチェックで周る。

リバーは3♣。また低めの、3枚目のクラブ。UTGのぼくがポット6割くらいのオールインをして、お兄さんは1分弱悩んで降りた。

言ってしまえば、AToという手をブラフとして使い切って、ブラフが成功したってだけだし、AToをブラフに回すこと自体はなにもおかしくないのだけれど。不思議なのは、ぼくは誰かの手に引かれるかのように、意味も分からずこのプレイラインを取ったということ。そして、意図はわからないのにこのルートの正しさを確信していたこと。

フロップのチェックレイズが特にトリッキーなラインで、あまり自然ではない。リバーのオールインも、フロップほど変ではないけど少し気合が入っている感じ。言ってしまえば、タガが外れてる。

こういうプレイをするのは、ヤケになったり、ショートになって開き直ったり、最初からアグレッシブに振り切れてるひとが多い気がするのだけど、そのどれでもないのがとっても不思議で。理論に支えられるでもなく(というかGTOからは外れている)、静かにAToと心中するみたいなオールインができたのが自分でもよく分かっていない。なんだろうね。こわ。

 

 

考えてたことを実況しながらもう一度再生してみよう。プリフロップはあんまり違和感ない。オープンする下限のハンドではあるけど。「ブラインドが上がってきたから4WAYとかにはならないだろうなー」とか思ってたらヘッズアップになって、うれしい。

フロップ、KKJ。ぼくはこのフロップはUTGが強く、レンジのほぼすべてでコンティニュエーションベットを打つべきことを知っていた。おそらく、COのお兄さんもそれを知っていたと思う。それを認識しながらも、あえて道から外れてチェックレイズの選択肢を選び、レイズするつもりでチェックを打った。ぼくはお兄さんと「セオリーを再現できるかどうか」の戦いではなく、「未知の場所でどちらが足を止めずに踊り続けられるか」の戦いをしたかった。いや、正確にはぼくの中のブラックボックスがそういう戦いをしたがっていた。自分の中に、干渉できない蠢きがあった。

ぼくのチェックをどう思ったかは知らないが、お兄さんは2000点の安めのベットを打ってきた。たぶんぼくでもそうする。チェックは弱すぎる。「7500。」ぼくは想定通りレイズを返す。踊りたい気持ちとは別に、降りてくれと願う気持ちが顔を出す。お兄さんは少し手を止めたが、あまり時間を置かずにコールした。

 

ターンはあまり関係なさそうなカードが落ちる。ぼくは諦めていた。21000点のポットに12000点の残りスタック。オールインするのに気持ち良い額といえば額だが、それはたぶんコールされると心の中のブラックボックスがそう言っている。「それよりもリバーで打つほうがキモいよ?? たぶんチェックバックされるしさ。そうしようよ、ね???」ぼくはその声に従い、チェックをする。お兄さんもチェックをし、五枚目のカードが開く。

 

三枚目のクラブ。正直、あまりうれしくはない。フラッシュのブロッカーとしてはブラフに最適だけれど、AKみたいなKのトリップスがオールインを躊躇するカードでもある。ぼくはブラックボックスの顔を見る。「やだねー。でもさ、ここでオールインするとキモいよ??? 行こ行こ!!!」 ……ヤケになってるのか、こいつは。でもぼくはブラックボックスのことを信用しているので、従うしかない。「オールイン。」 あとは祈るだけだ。お兄さんがKを持ってたらまずコールされるし、お兄さんがぼくのキモ踊りの足跡を見破ったらキャッチされてしまう。ブラックボックスが自信満々に構えている一方で、ぼくは心中不安になりながらお兄さんの決断を待つ。数十秒時間を取って考えたあと、お兄さんはカードを捨てた。

悩んでいた時間から考えると、ブラフキャッチャーを捨てたのだろう。ブラックボックスは自慢げに踊っている。ぼくは安堵し、ブラックボックスに感謝しながらも、ぼくのこれ以降のポーカーは彼(彼女)の奇妙な欲望を満たすためにただひたすら付き従う、従者のようなプレイスタイルになるのだろうと思った。

 

 

………。なんか小説仕立てになってしまった。でも、心の中はこんな感じ。ぼくはぼくなりにポーカーを勉強してるし、知識もあるけど、それとは別に育ったナニカがいるの。

頭でっかちなぼくと対照的に、勘が鋭いブラックボックス。彼(彼女)は思考した結果だけを投げつけてきて、そう動くべきだと命ずる。「なんで?」と訊いても、「だってチェックレイズしたら降ろしやすいよ?」みたいな浅い表面の答えしか返ってこない。

でも、実際そう動くとその選択が結果的に正しくなりがちなことを経験でぼくは知っている。だからよく知らないまま動く。今回の一戦でお兄さんに勝てたこと自体は流れのほうが大きいけれど(お兄さんの手札が即コールされるほど強すぎなかったし、もしかしたらキモい踊りをしなくても降りてくれるくらい弱かったのかもしれない)、でもぼくのポーカーの長期的な強さは(もしぼくがそういう風に強かったとして)ブラックボックスの直感によるものだと思う。

 

ブラックボックス」というと一人の人間がいるようだが、その中身としてはたぶん恐ろしいほどおびただしい群体なのだと思う。推察でしかないけれど、ぼくは自分の中にたくさん人を飼っている。ポーカーをするとき、ぼくはその人たちにいろんなハンドを持たせてプレイさせる。お兄さんみたいな相手も含めて。

たとえば、フロップでKKJが出たとき。ぼくは自分がプリフロップにオープンする様々なハンドを飼ってる人たちにプレイさせる。お兄さん側にも飼ってる人を適当に置いて、プレイしてもらう。UTGが飼ってる人Aさんだとして、ハンドがAAだったらフロップ1/3ベット打ちそうだな、COが飼ってる人Bさんで55だったらそれにコールしそうだな、とか。CさんがUTGでAKだったらチェックレイズするかも?とか。DさんはCO側だったとして、チェックで周ってきたらAJもベットしそうだなとか。「ブラックボックス」は、これを様々な人、様々なハンドで際限なく繰り返している。ヤバ。キモ。

際限なく繰り返すといったが、それには条件がある。ここで、最初のぼくとお兄さんのイメージの話が必要になってくる。

お兄さんは渋谷らしく格好良い雰囲気で、ポーカーもこなれてた。格好良いから、たぶんポーカーもかなり上手い。テキトーなこと言ってるように聞こえるかもしれないけど、そうなの。ポーカー上手いタイプのイケかたしてたもの。他者からの視線を適切に把握できるタイプ。たぶんポーカーの経験はぼくよりずっとあるだろうし。

対してぼくのテーブルイメージは(ぼくなりに見れば)平凡なポーカープレイヤーという感じ。プリフロップレンジがやや堅めで、比較的アグレッシブで、ある程度勉強はしてそうな、とはいえ「平均」から逸することもなさそうな感じだと思う。格好良くもないしね。服も雰囲気も自己中心的だから。

ぼくは多種多様な人間を飼っているけれど、プレイさせるのはこのイメージに沿った人間だけである。UTG(ぼく側)にもCO(お兄さん側)にもこの印象に近い人たちを置いていく。

その結果見えたのがフロップのチェックレイズ、ターンチェック、リバーのオールインというプレイラインである。ぼくが飼ってる人間(の中でぼくのイメージに合う人たち)にプレイさせた結果、このプレイラインはほとんどバリューしかない。お兄さん側に置いた人間たちも、「バリューしかないから降りる」と言っていたもの。実際、今回は降りてくれたし。お兄さん側がしそうなミスと、お兄さんが思っているネズ側がしそうなミスのズレを見つけて、隙を付けるときにブラックボックスは教えてくれるのだと思う。

 

そうして、ぼくは「ブラックボックス」に餌をあげ続ける。彼(彼女)の選択が合っていれば報酬を与えるし、間違っていればそれを知らせる。ぼくは彼(彼女)が世界を知るための感覚器であり、そして世界と関わるための手足だ。ぼくがポーカーを学ぶことすら、ぼくの目に映るものを彼(彼女)に見せるための手段でしかない。そんな気がする。

 

 

………変な終わり方になってしまった。「自分のプレイがよくわからなかったから、それを考えてみる」という始まり方をしたけれど、考えた結論としては「これからブラックボックスの時代が始まり、ぼくはそれに付き従う存在になるので、むしろどんどん分からなくなる」な気がする。あはは。楽しいよ。うん、自分のコントロール不可能な範囲に振り回されるのはたのしい。

まあ、でも、よくないんだけどね。いわゆるエクスプロイトだけになると長期的に勝てないから。セオリーを知ってそれを守るのはぼくが頑張らないといけないのかも。ふたり(群体だから二人じゃないかも)で手を取ってどこまでも高みに上っていけたらいいね。そしたらきっと楽しいよ。

 

そんな感じ。おわり。一歩間違うとギャンブル狂いになるから気を付けないとね。でもキモい場所で踊るの、ブラックボックスはきゃっきゃするし、ぼくもその命令に従うのは気持ちいい。だから餌はあげちゃう。破滅しないといい。祈り。今日はこんなところにしておこうかな。それでは、また。