「つまり、このトリビアの種、こういうことになります」
人間が1日で食べられるシュトーレンの数は、[?]切れ
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こんにちは、墨鼠です。昨日12月14日、シュトーレン食べ放題パーティーに参加してきました。選りすぐりの11種類のシュトーレンを食べ比べできる最高のイベントです。
「シュトーレン狂い」というイベント名は伊達ではない。この集まりはしっかりと狂っている。
シュトーレンというクリスマス菓子はとっても美味しいし、それを集めてパーティーを開くというのは理解に難くない。常軌を逸しているのは、その本気度である。
上記のリンク先には主催者が集めた9種類のシュトーレンが掲載されている。これはただ適当にかき集めたシュトーレンではない。主催者が好きなパン屋やケーキ屋、もしくはインターネットで有名なお店から取り寄せた、確実に美味しいであろうシュトーレンなのだ。それが9種類。プラスでぼくも2種類持っていったので、11種。11種のホールのシュトーレン。正気の沙汰ではない。
そもそもシュトーレンというのは見た目よりずっと"重い"食べ物なのだ。大きさだけでいうなら焼きそばパンを一回り大きくしたくらいの大きさだけれど、焼き菓子を圧縮したような密度の高さと、保存食として成立しうるほどの甘さを両立させているのだ。普通は薄切りにして1日に1,2切れずつちまちま食べるのだが、それくらいでちょうどいいのだ。
それが、11種。致死量である。主催者の収益も胃袋の大きさも人間の体調も度外視して、とにかく良いシュトーレンを集めたいという意志の強さを感じる。それはとても美しく、そして狂っている。
長々とした前置きはこれくらいにして。そんな狂気のパーティーに参加したので、レポートを書いていこうと思います。人間がシュトーレンを食べ続けたらどうなるのか。気になる方はどうぞ。
18時過ぎ。シュトーレンのカットが終わり、カウンターに並ぶ。

圧巻である。繰り返すが、これは焼き菓子やパンではなく、シュトーレンである。倍量のパンが置かれていると思ってもらえれば迫力が伝わると思う。これを参加者たちで好きなだけ食べられるという。
「11種あるなら2個ずつ食べたら22個も食べられる! でもいろんな人も来るだろうし、それは食べ過ぎかなあ? でも15個くらいは食べたいな」と、この時は無邪気に考えていた。スタート時には3人の参加者が集まり、細やかにパーティーは開始された。
奈良 ピエニブラン

1,2個目。とりあえず近いところにあったやつ。 「黒ごま」「アールグレイとトンカ豆」。
一口食べて分かる。美味しい。二つとも変わり種というか、味のベースを普通のシュトーレンとは変えている。それでいてシュトーレンらしさは保たれている。
「黒ごま」は食べると異国の雰囲気が広がる。香りは黒ゴマなんだけど、知らない場所って感じ。どこだろう、ここは。ファンタジーの世界を散歩しているような感覚。たのしい!
「アールグレイとトンカ豆」はさらに不思議。スパイスとハーブ。中東みたいなイメージのシュトーレンだ。知らんけど。その雰囲気をベルガモットの華やかな香りが包んでおり、なんというか、謎。でもめちゃくちゃたのしい。知らない土地を旅行するのが好きな人は好きかも!
シュトーレンは、自由だ。少しくらいならアレンジしてもシュトーレン性は失われない。だからこそ、それぞれのベーカリーがそれぞれのシュトーレンを作れる。それを感じられるシュトーレンだった。これからまだ9種のシュトーレンが待っている。心を躍らせながら次のシュトーレンに手を伸ばした。
大阪 ルシュクルシュクル

3個目! 主催者の好きなお菓子屋さんらしい。美味しいけど変な場所にお店があるとか。わざわざこのために買いに行ってくれるなんて、やはり狂っている。ありがとう、ありがとう……
味はベーシックなシュトーレンという感じ。特徴的なところはないけれど、なんというか、ちゃんと美味しい。やるべきことをしっかりやって、マイナス要素をちゃんと削ぎ落とした完成度の高いシュトーレン。ぼくはこれが一番好きだったかも。
あと、マジパンが美味しい。今まで自分で買ってたシュトーレンにはマジパンが入ってなかったのでちょっとびっくりした。栗かと思った。やわくて美味しいマジパンもあるのね。
神戸 ラブニュー

4個目。なんか有名らしい。チョコレートのシュトーレン! やはり、シュトーレンは自由だ。
美味しかった、美味しかったんですが。あんまり記憶にない。11種も食べたから……
仕方がないのでお土産にもらった一切れを今食べました。洋酒の入った大人っぽいチョコレートケーキみたいな味。これはこれで美味しい。シュトーレンといえるかはさておき。ひとりで一日ずつ食べるというよりは、クリスマスケーキ代わりにみんなで食べると楽しいかも。
こちらもマジパンが入っており、その部分だけ甘さが引き立っており美味しい。やはりシュトーレンは緩急だ。
京都東山 chocolaterie_hisashi

5個目。チョコレート屋さんのシュトーレンとのこと。周りがチョコレートでコーティングされており、存在感が強い。と思いきやチョコレートの内側に粉糖部分もあるので、ちゃんと甘い。
同じチョコレートシュトーレンでも、こちらはナッツが多め。チョコレート屋さんらしい上品なカカオの香りと風味豊かなナッツ、粉糖やマジパンの甘味が混ざり合っており完成度が高い。
こちらも毎日少しずつ食べたりはできないかも。美味しすぎて一気にたくさん食べたいタイプ。友達みんなで集まってワイワイ食べたい。もしかするとシュトーレンって美味しすぎるとシュトーレンとしての性質を保てないのかもしれない……
さて。5切れ食べたところで脳が何かを言っているのが聞こえてきた。
「もうええでしょう」
脳が言っているのがまた面白い。胃ではない。胃は「別にまだいけるよー」と言ってる。たぶん血糖値が上がりすぎてストップをかけているのだ。そもそもシュトーレンは保存食になるくらい甘いんだから、言うなればジャムを食べ続けてるようなものである。確かに、やめた方がいいのかもしれない。理性ではそう思う。
そんなこと言ってられるか!!! 主催者が狂いながら集めた魂のシュトーレンたちを、僕の正常な判断によって無駄にすることなんてあってはならない。狂いには、狂いで返すのが礼儀だ。まだまだいける。人間は本能を狂いで超えられる生き物なのだから。
京都岡崎 BÄCKEREI PERKEO Alt Heidelberg

6個目。こちらはぼくが持ってきたもの。京都の岡崎にある本格的なドイツパン屋さんのシュトーレン。ぼくが3年前くらいに開催したシュトーレンパーティーで一番美味しかったものを参戦させました。
他のシュトーレンが軒並み美味しいものばかりで、自分の持ってきたものが劣ってないか心配だったのだけれど。食べてみるとそんなもの杞憂で、しっかりと美味しかった。
他のシュトーレンがわかりやすく華やかな味だった一方で、こちらは甘さが控えめで落ち着いた感じ。そのぶん静かにスパイスやドライフルーツが香り、ゆっくりと味の変化を楽しめる。シュトーレンパーティーの中にひそませておくと箸休め的になっていいかもしれない。
京都北山 AND Bread
7個目。同じくぼくが持っていったもの。家から徒歩圏内にある激ウマのパン屋さん。クロワッサン、バゲット、フィナンシェ、チャバタ、何を食べても美味しいお店のシュトーレンが美味しくない訳なかろうて。
切ってみると断面のドライフルーツやナッツの量が全然違う。他のシュトーレンと比べてもマシマシで、レーズンの甘さとナッツの香ばしさが口いっぱいに広がる。少し生地は柔らかめで、パンに近い印象。贅沢なレーズンパンに少し寄ったシュトーレンという感じで面白い。
こちらは特に他の参加者にも好評だったようで、よかったですね。徒歩圏内にある最高のパン屋さん、ありがとう……
鎌倉 BREAD IT BE

8, 9個目。「黒 ナッツとドライフルーツ 赤ワイン ラム キルシュ カカオ」「白 マンゴーとパイナップルとココナッツ 白ワイン キルシュ マリブラム 獺祭」とのこと。
………。覚えてない。白は爽やかで、黒は大人めだったと思う。というのも、7切れ目を超えたあたりから味が分からなくなってくる。美味しいのだけれど、舌や脳がぼんやりして、なんとなく美味しいという感じ。味を見分けることができなくなっている。こちらはお土産に持って帰らなかったので、冷静になってからのレビューもできません。ごめんね。
あ、でも白はかなり好きだった。3位くらいには入るかも。入るかもと思ったのは覚えてるんです。信じて。
京都 プチメック

10個目。ベーシックながら甘めのシュトーレン。おわり。
……美味しくなかったわけではないんです。もう脳が砂糖とバターしか感じられなくなっているんです。二桁に突入すると認識がぼやけてくる。まるで泥酔しているかのよう。シュトーレンを食べ過ぎると、人は、酔う。これがシュトーレンパーティーのリアルだ。
岐阜県飛騨高山 トランブルー

11個目。かなり良いシュトーレンらしい。わざわざ取り寄せたとか、インターネットではすぐに売り切れたとか。
……はい。これをラストに回したせいであんまり覚えてないです。でもこれはお土産にもらったから、いま食べてレビューに代えさせていただきます。
………。めっちゃ美味しい………。洋酒が香る非常に上品な生地、明らかに上質なナッツとドライフルーツ、とても甘い外周部分のコントラスト。これが、これこそが、シュトーレンだ。
こんなに美味しいシュトーレンの印象がぼけてしまうくらい脳がやられていたっぽいです。やはり、我々は狂っていた。11種類は人類には多すぎたのだ………
「ちょっと歩いてきます」
19時。1時間弱が経過した。11種を全て摂取し、一息つく。というか、つかざるを得ない。体が一切甘いものを受け付けないのだ。甘いものとしょっぱいものを交互に食べたいというひとの気持ちが分かる。いま、猛烈に塩気が欲しい。
そして同時に、身体が動きたがっている。このまま止まっていると何か良くないことが起こるような感覚。端的に言えば、カロリーを消費したい。お店の人に「ちょっと歩いてきます」と言って15分くらい散歩した。これが、シュトーレン狂のリアルだ。10を超えると休憩がいる。散歩宣言にお客さんたちはウケていたが、きっと理解してくれていただろう。
散歩中、世界がぼやけていることに気付く。目に入った情報を認識するまでに時間のラグがあるような状態。やはり酔っている。ここでやめるか? それとも狂いの果てまでたどり着くか? 迷いながら結論を出した。

蒙古タンメンの購入である。狂いへの歩みを踏み出してしまった。塩を入れればもう一度甘味を食べられる。なぜか? 塩は砂糖と相殺するからである。いま考えれば何の正当性もないのだが、当時はこれが正しいと思っていたのだ。
そしてその選択が功を奏し、さらに3つのシュトーレンを摂取することに成功する。合計14切れである。少し脳と舌は回復したのだが、それでもぼやけていたのに変わりはないのでレビューは割愛させていただく。「甘い」「ドライフルーツの香りがする」「美味しい」くらいしか感じられなかったのだもの。
ちなみに食欲はありませんでした。シュトーレンは10切れを超えると、食欲がなくなります。2周目に入ってできるだけたくさんのシュトーレンを知りたいという探求心だけで食べてました。上記の通り、シュトーレンを知るには認識がぼやけすぎていたのですが。そもそも、どの3個を食べたかすら覚えていない。ヤバすぎる。毒じゃん。
闘いを終えて
21時。ぼくはカウンターでぼんやりしていた。ぼんやりしかできない。頭がぼーっとしていて、何も考えたくないし何も食べたくない。強いて言うなら水が飲みたい。早く寝たい。バーに来たのにポケポケでネット対戦している始末である。血糖値が上がるとここまで何もできなくなるのか。おそらく1時間程度では回復しないと見込み、少し早めに帰ることにした。
大量のシュトーレンは人を疲れさせる。少なくともぼくはシーシャを吸った後のようにダウナーなとろけ方をしていた。なんとなく、帰り際のお店のみんなの雰囲気は弛緩していたように思う。人類はまだ、シュトーレンの前で右往左往することしかできない小さな存在なのだ。
最終的には狂い疲れてしまったが、とても楽しいパーティーだった。プレゼント交換会もしたしね!! 手作りサングリア用のスパイスセットが、ラフランス3個に変わりました。うれし。ホットワインも美味しい紅茶も飲めました。
ここまでの良きパーティーは、パーティーを良くしようという皆さんの純粋さという狂気によって成り立ったと思う。主催者であるラマちさんをはじめ、関係者各位に感謝をして締めに代えさせていただく。よきパーティーをありがとう……
来年はこれを読んだみんなもシュトーレンパーティーに参加して狂おう! みんなで食べたら一人当たりが食べる数も減って狂いも少し薄くなるから!! ぜひ、ぜひ!!!
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「こうしてこの世界にまた新しいトリビアが生まれた―――」
人間が1日で食べられるシュトーレンの数は、14切れ